ストーリー
このシリーズの魅力は「罪悪感」と「背徳感」であるとは、前回も語った通りだが、
それらは、シリーズ初作品である「刻命館」に最も含まれている要素と言えよう。
実の弟に父殺しの濡れ衣を着せられるという前代未聞のオープニングに始まり、
復讐のために誓う悪の血判状、命の恩人ですら容赦なく手にかけるその所業・・・
これらが全て、ゲーム開始10分ほどで語られるのだ。たった10分でこの内容である。
影牢も負けてはいないが、開始直後のシナリオがトラップレッスンではやはり浅い。
開始の時点でかなりの大差をつけた刻命館であるが、実は大きな欠点がある。それは・・・
魔神の復活に必要なアイテムの価値が、全くといっていいほど感じられなかったこと。
シナリオに必要なだけで、ゲームには何も関わってこない物が多かったのが惜しまれる。
出来ることなら、全てのアイテムに何らかの「意味」を持たせてほしかった。
しかし、影牢にも欠点がないわけではない。それは、刻人の秘密。
まず、初めの刻人は一体どうやって誕生したのか。そして、何故魔神に選ばれたのか。
影牢の世界と刻命館とのつながりは何なのか。そもそも、影牢の世界は刻命館と関係があるのか。
思いつくだけでもこれだけ列挙できる。もう少し奥行きのある設定がほしかった。
結論
まずは感情移入から入るという人は刻命館
ゲームさえ楽しめればいいという人は影牢
サウンド
基本的に、シンとした静かな音楽が特徴的な刻命館。
これは館の空気を表現しているのだろうか・・・
しかし、盛り上がる場面では否応なくそのテンションは上がる。
特に最終話の盛り上がりは、ちょっと寒気がしたくらい。
まさかあそこでタイトル曲を持ってくるとは・・・
それに比べると、影牢は場の空気を押し潰すような曲が多い。
気分は高揚しないが、静かに煮えたぎるといった感じか。
ローテンションのまま盛り上がれるので、個人的には好き。
SEや断末魔に関しては、文句なしに影牢が上。
だって刻命館、断末魔男女一つづつしかないし。
結論
場の空気とかを大事にしたい人は刻命館
鬱屈とした盛り上がりが好きな人は影牢
グラフィック
比べるまでもなく影牢が上なのだが、ちょっと待った。
刻命館は、影牢には決して持ち得ない大きな魅力を秘めているのだ。
それは、トラップの安っぽさ。旧作ならではの安っぽさが、重い世界観に
何とも言えないコミカルさを醸し出してくれている。実はこれが大きい。
このギャップのおかげで、本来鬱ゲーとして評価されるべき刻命館が、
一種のギャグゲーとしての評価も勝ち取ることに成功しているのだ。
中でもお気に入りなのは、「毒神の足」と「炎魔の足」。
足から何かを撒き散らしながら踏みにじるその画は、凶悪ではあるが
それだけではない何かを、見る人の心にもたらしてくれるはずだ。
（ちなみに筆者には、足の臭いとの波状攻撃に見えた）
結論
笑いを誘うトラップが特徴的な刻命館
凶悪なトラップが嗜虐心をそそる影牢
操作性
ジャンルが違うので比べようもないが、どちらも快適であると言えよう。
ただし、刻命館の屈伸運動は3D酔いする人には大敵（しかも解除不可）、
影牢のもたついた動きは、短気な人には勧められない。注意すべし。
システム
トラップコンボは影牢がハシリなので比較のしようがないが、
刻命館も、影牢にない独自のシステムを持っている。
それが、「モンスター合成」と「仮面」である。
自由に使えないトラップの穴をモンスターで埋めるか、それとも、
モンスターとの戦いで消耗した侵入者をトラップで確実に仕留めるか。
体力温存のために侵入者を引き離す仮面を使うか、それとも、
確実に仕留めるためにわざと引き付ける仮面を使うか。
トラップコンボほどの奥深さはないが、刻命館というゲームの中では
かなりの戦略性を持った、いわば「伏兵的存在」なのだ。
しかし、トラップメイキングは圧倒的に影牢が有利。
トラップ同士の掛け合わせで進化させていく影牢に対し、
手持ちのトラップ以上には進化させられない刻命館。
この差はやはり、旧作の宿命なのだろうか・・・
結論
手数が多く、頭を使った戦法が好きなら刻命館
手数は少ないが、奥の深い戦法が好きなら影牢
総括
大人のミレニアﾀﾝに(;´Д｀)ﾊｧﾊｧしたいなら刻命館
少女のミレニアﾀﾝに(;´Д｀)ﾊｧﾊｧしたいなら影牢 |